★★★  ガンコなヘッドホンアンプ 2019  ★★★

2014年ごろ、ガンコなヘッドホンアンプというタイトルで、ヘッドホンアンプを、5台
ヤフオクにて、販売させて頂きました。 その当時購入購入していただいた方々には感謝いたします。
また、音質面において高評価をいただき嬉しく思いました。

プリント基板の不足で一旦終了してましたが、また作ろうと思っては、いました。
2016年の熊本地震で、しばらく物作りは、止めてましたが、木製EIAラックから始めて
今回、少量ではありますが、ガンコなヘッドホンアンプを復活させる事にしました。

まずは、ガンコなヘッドホンアンプとはどういう物なのか。 
というところから説明したいと思います。

★ 
その前に、私がやっていた事について説明します。
私は、オーディオマニア( オーディオも好きですが )というより
シンセマニアという方が当たりかな。? と思います。 
遥か昔は、4chのオープンリールデッキを用いシンセの音を多重録音して曲作りをしていました。
当然そのような事をしているとミキサーにヘッドホンをつないでモニターしながら、
シンセを弾いて録音するとかやってました。 当然ヘッドホンの使用頻度が、多かった訳です。

でも、その当時 4chのデッキでピンポン録音しながら音を重ねていくと音質劣化が、
醜いですね。
辛かったです。 ところがシンセサイザーが デジタル化され音質も良くなり、機能も向上して
MTRを使わなくても MIDIシーケンサで、音ではなく、MIDIの演奏情報を記録出来るようになり
劇的に、音質と作業効率が向上しました。 
最終的に全音源を同時に鳴らして( 同時発音数の限界はありますが,,, )、ステレオに
ミックスダウンして、マスターレコーダに録音するという事になりました。 

最近はパソコンの中だけで音楽制作が完結する場合もあります。 
特に初音ミクとかボーカロイドを使う場合は、パソコンの中だけで作ります。
( USB接続のオーディオインターフェースで、音をモニターします。)

という事で 昔も、今も、私はヘッドホンで モニターするという事は同じなのです。

で、個人が買えるレベルの安いミキサーの ヘッドホンアンプは、オマケ的な物が多く
高音質なヘッドホンアンプが、欲しいな。 という事が、ガンコなヘッドホンアンプの始まりでした。
また複数台作ってヤフオクで販売しても良いのではとも考えました。

最近のヘッドホンアンプは多機能で、USB接続のD/Aコンバータと一体となっており
パソコンで音楽が楽しめる物が多いです。

それと比べると私の作ったガンコなヘッドホンアンプは、
ゆうずの利かない頑固者(物)というイメージでしょうか。 


★ 特徴をいくつか記載します。

[1] 小さなヘッドホンアンプでは、まずあり得ない±2電源方式。 これは、スピーカーと接続する
   オーディオアンプであれば当たり前ともいえますが、ヘッドホンアンプでは殆ど無いのです。
   ±2電源方式では、なにがいいのかというと、単電源アンプでは、電源電圧の半分の電圧が
   常時 出力段に出るので直流カット用のカプリングコンデンサを入れてあります。

   この低音に影響の出る カプリングコンデンサを取り除きたい。 という事で、
   ACアダプタが2個で煩わしく思われる方もおられるでしょうが、音質優先の思想に
   なっております。 2014年のバージョンは、±9V( p-p 18V )でしたが、
   今回は、±12V( p-p 24V )に パワーアップされてます。
   ヘッドホンアンプのくせにやりすぎだと思われる方もおられるかもしれません。
   ドライブ能力は、より強くなったと思います。

[2] 上の±2電源方式と関係しますが、電源ON、OFF時のポップノイズのカットのため
   リレーによるミューティング回路を採用しています。 これも普通のヘッドホンアンプでは
   あり得ない事でしょうが、±2電源方式では、電源ON、OFF時は、大きなノイズが出る
   可能性もあり得ると考え、Powre ONから、電源電圧が落ち着くまで 約 3秒のミューティング
   時間を設けています。 また、ヘッドホン端子にヘッドホンを挿入した事を検出する接点が有り
   ヘッドホンプラグがジャックに挿入されて1秒後にミューティングリレーの接点が ONするように
   なっています。 ミューティングの制御は 8pin PICマイコンを使用しているので安定しています。

[3] 一番音質に関わる出力段には、ナショナルセミコンダクタ(現在はテキサスインスツルメンツ)
   の、LME49600を 左右2個使っています。 このICも ヘッドホン用としてはかなり高出力な
   部類です。 IC内部に過電流、温度上昇による制限回路が内蔵されてます。
   実は、このICの電源の最大定格は、±20Vで、±12Vでも、まだ余裕があります。
   50Ωのヘッドホンで1時間ほど聞いて、IC周辺を触ってみましたが
   熱は殆ど感じられませんでした。

[4] 前段のオペアンプは、同じくナショナルセミコンダクタの、LME49860を使用しております。
   オーディオ用高性能ハイスルーレイト高利得の OPAMPです。
   回路的には、メーカー推薦の回路図を用い、一部の抵抗の定数を変更しています。
   軽く 100KHzを超える帯域を持っています。 ( 実は、-3db下がるポイントは何と 700KHzでした。)
   ちょっと帯域が広すぎて高周波ノイズを拾う恐れがあるので、付属品としてシールドケーブルに
   付けるフェライトビーズを 付ける事にしました。

[5] 独立したDCサーボ回路
   オーディオ信号増幅オペアンプとは独立したDCサーボ回路に、安定性に定評のあるNJM4580Dを
   使用しております。 DCドリフトは、±10mV以下に押さえ込んでいます。
   傾向としては、電源ON直後が、ややドリフトが大きく ( ミューティングリレーの遅延により
   ヘッドホンには殆どラッシュカーレントは流れません。) 時間経過と共にドリフトは小さく
   押さえ込まれて行きます。


[6] 市販汎用ケース採用によるコストダウン
   実質本位の思想で、ケースの方は汎用品を使用してコストダウンを図っています。
   しかし、ケース内部には防振対策としてブチルゴムの防振材を振動の腹になる部分に
   張り付けています。

[7] 更に今回、細かい事ですが、ノイズ対策としてシャーシとケースの電気的結合を強化するため
   4箇所の留めネジの内側部分に、リューターによる研磨加工を施しています。


★ このヘッドホンアンプ開発の流れ

まず、最初に3種類の試作品を作りました。


そして客観的な意見を聞くために熊本のオーディオショップ「音楽舎」の店長に聞いてもらいました。

[ A ]のヘッドホンアンプ( 出力段:LME49600 )
[ B ]のヘッドホンアンプ( 出力段:小信号トランジスタ4パラ接続 )
[ C ]のヘッドホンアンプ( 小型パワートランジスタ使用 )


まず、私も予想してましたが、[ C ]は、論外。!! 
私も、パワートランジスタは、キャリア蓄積効果が大きくなる傾向があるので高域が、いまいちなのは予想してました。
それとは別に、アルミヒートシンクの共振を指摘されました。
確かに、ほんの僅かですが、ヒートシンクの共振による余韻のような音が付加されてる気がします。

[ A ]は、低音から高音までバランスよく、ニュートラルな音という事でした。

[ B ]は、チェンバロの音色とかに惹かれる要素もあるが、低い音がいまいち...という事になりました。


 ちなみに、 音楽舎の店長さんは真空管アンプの達人のような方です。
音楽舎の紹介は、こちらのページを参照して下さい。

日本の大手?老舗オーディオメーカーの方が、新製品を持って音楽舎に来られますが
結構、辛口な評価で メーカーの技術者の方も タジタジです。
真空管アンプメーカーのトライオード社長とは、仲がいいみたいです。


私は、よく人から貴方は オーディオアンプは真空管が好きなのか、トランジスタが好きなのかと聞かれます。
私自身は、真空管とか、トランジスタに、あまりこだわらないタイプと思います。 
オーディオパワーアンプは、三栄無線の真空管のキットを組み立てて使用しています。
プリアンプは、三栄無線のFETアンプキットを組み立てて使ってます。 両方混在という事ですね。
パワーアンプは、真空管の方が好きです。

 ちなみに私は、真空管アンプの設計方法は分かりません。 
私が学生時代 既に、トランジスタしか習ってなかったという事もあります。

今の電子系の学校に行ってる学生さんは、もう、トランジスタも知らないのではと思います。
デジタル回路もあまり分からないようで、JAVAとかのアプリ開発言語とかを中心に勉強されてるようですね。

若い技術者の方が、基本というか土台となる技術を知らないという事が、これでいいのだろうか。
と、思うのは、私自身 もう古い人間になってきているのでしょうか。?

私が、昔いた会社では、マイコン応用分野の基板設計とマイコンのソフト開発をやっていました。
こういう組込み応用分野では、ソフトとハードの両方を理解してないと具合わるいですけどね。

横道に逸れて申し訳ありませんが、もっとローテクな失敗例の話があります。
積層セラミックコンデンサという コンデンサがありますが、
特別な対策品でない限り 温度特性が悪いです。
 これをうっかり、CRの時定数でタイミングを作っているところに使用すると
温度変化によってタイミングがずれるのでとんでもない事になります。

たかがコンデンサ、されどコンデンサという事です。



★ ヘッドホンアンプに戻りますが、モニター系の性格を想定していたので [ A ]を 選択しました。
汎用のアルミケースに入れて作りました。



5年前、5台用意してヤフオクにて出品しました。 1ヶ月で全て売れました。

今回も基本的には同じ構成ですが、若干変更しております。
5年前は、ネグレックスというシールド線を使用してましたが、現在販売されてないので
モガミ電線の 2944 を 使用しました。


今回出品分の 内部は、このようになっております。


ケースや シャーシに黒い物が張り付けてありますが、ブチルゴムの防振材です。
ブチルゴムは、ベタベタするので表面のビニールは剥いでいません。

左側の基板が、ACアダプタの電源を受け入れる電源基板(リレー制御のPICマイコン含む)です。
小さいトランスのような物が2つ実装されてますが、コモンモードノイズフィルターです。

右側の基板がアンプ基板です。 左右に LME49600と小さいヒートシンクを付けています。
この薄いヒートシンクには、鉛シートを張り付け共振を防いでます。

左側のケースというか蓋部分の側面にあるネジ穴の内側部分の穴周辺に色が違って見える部分が
あります。 これは、リューターで表面を薄く削ってシャーシとケースの電気的結合を強くする
意味合いがあります。
この対策を行うことで高周波ノイズの混入を 更に防ぐ事が出来たようで
音が良くなったように思います。


一応、測っていたので、左右チャネルにパラって入れた方形波の出力波形
10KHz、100KHz、1MHzの オシログラフを示します。







1MHzは、信号源のファンクションジェネレータ出力波形が既になまっていたので
このヘッドホンアンプの正確な応答波形になっていません。
どちらかというと、ファンクションジェネレータの波形なまりを見ている感じです。

このデジタルオシロの上限周波数は、1ch使用時は、200MHzですが、
2ch同時使用時は、100MHzに落ちますので、
上記オシログラフは、帯域 100Mhzでの測定になります。



台数に限りがありますので、欲しい方は、お早めに購入(落札)をお願いします。